Difference between revisions of "SDxプロトコール"

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(溶液の調整)
(測定結果)
 
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このプロトコールは [http://en.wikipedia.org/wiki/Ionophore イオノフォア] や低分子 and other low molecular weight (2000 Da 以下の) イオンチャネルなどを [http://www.edaq.com/product_details_page.php?product_no=SDx-R1 tethaPod™] システムを使って、それらのテザード膜の電導度を測定する為の手順を示したものです。測定の教材に適したイオノフォアは [http://wiki.edaq.com/index.php/Ionophores_in_Society Ionophores in Society] のアプリケーションノートに記載されています。
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このプロトコールは [http://en.wikipedia.org/wiki/Ionophore イオノフォア] や低分子 (2000 Da 以下の) イオンチャネルなどをテザードメンブレンに取り込み、[http://www.edaq.com/product_details_page.php?product_no=SDx-R1 tethaPod™] システムを使って膜の電導度を測定する為の手順を示したものです。測定の教材に適したイオノフォアは[http://wiki.edaq.com/index.php/Ionophores_in_Society Ionophores in Society] のアプリケーションノートに記載されています。
  
測定前の準備としてに [http://wiki.edaq.com/index.php/Tethered_Membranes テザードメンブレン] のコンセプトと [http://www.edaq.com/SDx-APP1 tethaPod ソフトウェア] の使い方を習得しておいてください。
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測定前の準備として [http://wiki.edaq.com/index.php/Tethered_Membranes テザードメンブレン] のコンセプトと [http://www.edaq.com/SDx-APP1 tethaPod ソフトウェア] の使い方を習得しておいてください。
  
このプロトコールで使用するバッファー溶液は PBS ([http://en.wikipedia.org/wiki/Phosphate_buffered_saline リン酸緩衝食塩水]) 溶液です。ただ、別のプロトコールでは異なる緩衝溶液、たとえば 0.1 M KCl、リンガー液 [https://en.wikipedia.org/wiki/Saline_(medicine) 通常の生理食塩水]、その他 [http://en.wikipedia.org/wiki/Good%27s_buffers Good 緩衝液]、 [http://en.wikipedia.org/wiki/Tris- TBS ]  など。 下記で説明する多くのイオノフォアは脂肪族カルボン酸基を持ち、pK<sub>a</sub> は約 4.5 ~ 5 を示します。これらは pH 6.5 以上では完全にイオン化し、水に優れた可溶性を示すのでpH 緩衝液として活用されています。二価の陽イオン (Mg<sup>2+</sup>、Ca<sup>2+</sup> など) に対して特異性を示すイオノフォアを扱う際は、これらのイオンを一定濃度含む緩衝溶液が必要です。
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このプロトコールで使用するバッファー溶液は PBS ([http://en.wikipedia.org/wiki/Phosphate_buffered_saline リン酸緩衝食塩水]) 溶液です。ただ、同様なプロトコールでも別の緩衝溶液、たとえば 0.1 M KCl、リンガー液 [https://en.wikipedia.org/wiki/Saline_(medicine) 通常の生理食塩水]、その他 [http://en.wikipedia.org/wiki/Good%27s_buffers Good 緩衝液]、 [http://en.wikipedia.org/wiki/Tris- TBS ]  などを用いています。 ここに挙げる多くのイオノフォアは脂肪族カルボン酸基を持ち、pK<sub>a</sub> は約 4.5 ~ 5 を示します。これらは pH 6.5 以上では完全にイオン化し、水に優れた可溶性を示すのでpH 緩衝液として使用されています。二価の陽イオン (Mg<sup>2+</sup>、Ca<sup>2+</sup> など) に対して特異性を示すイオノフォアを扱う際は、これらのイオンを一定濃度含む緩衝溶液が必要です。
  
 
=== '''膜の作成''' ===
 
=== '''膜の作成''' ===
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[http://wiki.edaq.com/index.php/How_to_assemble_a_tethaPlate_cartridge 説明書] に従って[http://www.edaq.com/main.php?url=SDx-T10 tethaPlate] をアッセンブルします。
 
[http://wiki.edaq.com/index.php/How_to_assemble_a_tethaPlate_cartridge 説明書] に従って[http://www.edaq.com/main.php?url=SDx-T10 tethaPlate] をアッセンブルします。
 
[http://wiki.edaq.com/index.php/Making_a_tethered_membrane メンブレンの作成:]
 
[http://wiki.edaq.com/index.php/Making_a_tethered_membrane メンブレンの作成:]
# [http://www.edaq.com/SDx-S1 SDx-S1 リン脂質混合液,]  10 µL を各インプットウェルに注入し、2分間インキュベートして脂質二重膜を形成させる。
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# [http://www.edaq.com/SDx-S1 SDx-S1 リン脂質混合液,]  10 µL を各インプットウェルに注入し、2分間インキュベートして脂質二重膜を形成させる。
 
# 各ウェルに 200 µL の PBS を加える。
 
# 各ウェルに 200 µL の PBS を加える。
 
# 続いて 200 µL の PBS で3回ウェルを洗う。  
 
# 続いて 200 µL の PBS で3回ウェルを洗う。  
 
# ウエストウェルから余分の PBS を取り除く。
 
# ウエストウェルから余分の PBS を取り除く。
  
イオンチャネルの形成にエルゴステロールやコレステロールが必要な場合 (例えば Amphotericin B や Nystatin の研究など) は、膜を形成させる際に SDx-S1 リン脂質混合液にこれらの基質を加えて置く必要があります。
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イオンチャネルの形成にエルゴステロールやコレステロールが必要な場合 (例えば Amphotericin B や Nystatin の研究など) は、膜を形成させる際に SDx-S1 リン脂質混合液に、これらの基質を加えておく必要があります。
  
 
==='''溶液の調整'''===
 
==='''溶液の調整'''===
  
イオノフォアは通常、バイアル瓶などでミリグラムオ単位で供給されています。貯蔵液は供給元の容器の内容物を大きな容器に洗い出し、既知濃度に調整して保存します。通常、供給元は容器に記載する定量よりも多く (1 ~ 10% 程度) のイオノフォアを提供します。正確に定量する必要がある場合は、使用前後の元の容器を秤量して算出します。
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イオノフォアは通常、バイアル瓶などでミリグラムオオーダで供給されています。ストック液は供給元の容器の内容物を大きな容器に洗い出し、既知濃度に調整して保存します。通常、供給元は容器に記載したイオノフォアの量よりも多く (1 ~ 10% 程度) の量を提供します。正確に定量する必要がある場合は、使用前後の元の容器を秤量して算出します。
  
メタノール中に 1 mM のイオノフォアを溶かしてストック溶液とします。ストック溶液を −20°C (冷凍庫) で保存すれば長期間使用できます。一昼夜、または数日なら 2 ~ 4°C (冷蔵庫)でも保存が効。使用する前にストック溶液を室温に戻します。
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メタノール中に 1 mM のイオノフォアを溶かしてストック溶液とします。ストック溶液は −20°C (冷凍庫) で保存すれば長期間使用できます。一昼夜、または数日なら 2 ~ 4°C (冷蔵庫)でも保存が効きます。使用する前にストック溶液を室温に戻します。
  
ここで一定量のストック溶液を PBS 緩衝液で 1:100  に希釈し、10 µM (10000 nM) の希釈溶液を作成します。多くの  'lipophillic' (親油性)なイオノフォアでも 10 µM 程度の濃度の水溶液には問題なく調整できますし、それ以上濃くても構いません。 同様に、PBS緩衝液を使って 1、10、100、1000 nM の希釈溶液を作成します。  
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ここで一定量のストック溶液を PBS 緩衝液で 1:100 に希釈し、10 µM (10000 nM) の希釈溶液を作成します。多くの  'lipophillic' (親油性)イオノフォアでも 10 µM 程度の濃度の水溶液なら問題なく溶かして調整できますし、それ以上濃い過飽和の状態でも構いません。 同様に、PBS緩衝液を使って 1、10、100、1000 nM の希釈溶液を作成します。  
  
Note that the 10 µM solution will still contain only 1% methanol, which means that the solution is mainly water. Higher methanol concentrations can disrupt the membrane, or cause incomplete partitioning of the ionophore into the lipophilic membrane. If you need to use more concentrated ionophore solutions then you will need to make a more concentrated stock solution (eg 10 or even 100 mM, but beware that the ionophore might not be soluble at this level) and dilute this down to the desired levels.
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10 µM の溶液にはメタノールは僅か 1% しか含まれていません。即ち、これは水溶液と変わらない事を意味します。メタノールの濃度が高いと膜を壊したり、イオノフォアの親油性膜への配位を不完全なものにする恐れがあります。高濃度のイオノフォア溶液を使う必要がある場合は、より高濃度のストック溶液を使って (例えば 10 、ないし 100 mM、しかしこの濃度ではイオノフォアは溶けない恐れがあるので注意を要する) 、所定の濃度に希釈します。
  
[[File:tethaPod1.png|300px|thumb|right|'''Figure 2.''' A tethaPod unit, with its software in the background]]
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[[File:tethaPod1.png|300px|thumb|right|'''2.''' tethaPod ユニット、背景はソフトウェア]]
  
 
=== '''イオノフォアを添加''' ===
 
=== '''イオノフォアを添加''' ===
Ensure all solutions are thermally equilibrated at room temperature before starting.
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測定を始める前に、使用する溶液が全て室温と平衡状態にあることを確認します。
  
Start recording with the tethaPlate fitted to the tethaPod unit, proceed for several minutes until stable baseline signals are obtained for each of the sample wells. While still recording:
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tethaPod ユニットに取り付けて測定を始めます。各サンプルウェルのベースラインが安定するまで数分かかります。次の手順に従い:
  
#Withdraw 200 µL of the PBS buffer from the tethaPlate waste well.
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#tethaPlate のウエストウェルから 200 µL の PB 緩衝液を吸引します。
#Note the time and replace with 200 µL test solution at lowest ionophore concentration.
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#直ぐに、最も低濃度のイオノフォア希釈液 200 µL と入れ替えます。
#Record the membrane conductivity for at least 5 minutes, or until the signal plateaus.
+
#少なくとも5分間、シグナルが安定するまで膜の電導度を記録します。
#Withdraw 200 µL of the old test solution from the tethaPlate waste well.
+
#tethaPlate のウエストウェルから、測定したテスト溶液 200 µL を取り出します。
#Note the time and replace with 200 µL test solution at the next higher ionophore concentration.
+
#次に高い濃度の希釈液 200 µL のテスト溶液と入れ替えます。
#Record the membrane conductivity for at least 5 minutes, or until the signal plateaus.
+
#同じ様に少なくとも5分間、シグナルが安定するまで膜の電導度を記録します。
#Repeat steps 4 − 6, until the highest ionophore concentration is reached (or until the conductivity signal goes off scale, or the membrane ruptures)
+
#ステップ 4 ~ 6 を最大濃度のイオノフォア希釈液まで繰り返します(その前に、電導度シグナルがスケールアウトするか、膜が壊れてしまうかもしれません)。
#Withdraw 200 µL of the old test solution from the tethaPlate waste well.
+
#tethaPlate のウエストウェルから、測定したサンプル溶液 200 µL を取り除きます。
#Replace with 200 µL of the PBS buffer.
+
#200 µL の PBS 緩衝液と入れ替えます。
#Repeat steps 8 9 every minute, three times, and observe whether there is a decease in conductivity, indicating that the ionophore can be 'washed out'.
+
#8 9 の操作を3回反復し、電導度が減少してイオノフォアが'ウォシュアウト' されたのを確認します。
  
 
=== '''測定結果''' ===
 
=== '''測定結果''' ===
Derive conductivity ratios by dividing the observed conductivities by the ''baseline'' conductivity value, i.e. in the absence of ionophore.
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測定した電導度をベースライン電導度(即ちイオノフォアが無い状態)で割って、電導度比を求める。
  
Prepare a graph of log of conductivity ratio versus ionophore concentration, or  log of concentration, as appropriate.
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電導度比対イオノフォア濃度の対数グラフ、または必要に応じ、濃度の対数グラフを作成します。
  
It is usual to find that there is a sudden rise in conductivity over a single decade of concentration increase. If you want better resolution on your graph then repeat the experiment using a series of test solutions prepared over this smaller concentration range.
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急激な電導度の増加がある濃度で認められれば、良好な測定であることを示します。グラフの分解能を良くするには、テスト溶液の点数を増やし希釈濃度の幅を広めます。

Latest revision as of 17:57, 3 June 2014

このプロトコールは イオノフォア や低分子 (2000 Da 以下の) イオンチャネルなどをテザードメンブレンに取り込み、tethaPod™ システムを使って膜の電導度を測定する為の手順を示したものです。測定の教材に適したイオノフォアはIonophores in Society のアプリケーションノートに記載されています。

測定前の準備として テザードメンブレン のコンセプトと tethaPod ソフトウェア の使い方を習得しておいてください。

このプロトコールで使用するバッファー溶液は PBS (リン酸緩衝食塩水) 溶液です。ただ、同様なプロトコールでも別の緩衝溶液、たとえば 0.1 M KCl、リンガー液 通常の生理食塩水、その他 Good 緩衝液TBS  などを用いています。 ここに挙げる多くのイオノフォアは脂肪族カルボン酸基を持ち、pKa は約 4.5 ~ 5 を示します。これらは pH 6.5 以上では完全にイオン化し、水に優れた可溶性を示すのでpH 緩衝液として使用されています。二価の陽イオン (Mg2+、Ca2+ など) に対して特異性を示すイオノフォアを扱う際は、これらのイオンを一定濃度含む緩衝溶液が必要です。

膜の作成

図 1. tethaPlate. 各々小さな循環インプットウェルを持つ6個の小室と大きな長円形の排水ウェルが見えます。

説明書 に従ってtethaPlate をアッセンブルします。 メンブレンの作成:

  1. SDx-S1 リン脂質混合液,  10 µL を各インプットウェルに注入し、2分間インキュベートして脂質二重膜を形成させる。
  2. 各ウェルに 200 µL の PBS を加える。
  3. 続いて 200 µL の PBS で3回ウェルを洗う。
  4. ウエストウェルから余分の PBS を取り除く。

イオンチャネルの形成にエルゴステロールやコレステロールが必要な場合 (例えば Amphotericin B や Nystatin の研究など) は、膜を形成させる際に SDx-S1 リン脂質混合液に、これらの基質を加えておく必要があります。

溶液の調整

イオノフォアは通常、バイアル瓶などでミリグラムオオーダで供給されています。ストック液は供給元の容器の内容物を大きな容器に洗い出し、既知濃度に調整して保存します。通常、供給元は容器に記載したイオノフォアの量よりも多く (1 ~ 10% 程度) の量を提供します。正確に定量する必要がある場合は、使用前後の元の容器を秤量して算出します。

メタノール中に 1 mM のイオノフォアを溶かしてストック溶液とします。ストック溶液は −20°C (冷凍庫) で保存すれば長期間使用できます。一昼夜、または数日なら 2 ~ 4°C (冷蔵庫)でも保存が効きます。使用する前にストック溶液を室温に戻します。

ここで一定量のストック溶液を PBS 緩衝液で 1:100 に希釈し、10 µM (10000 nM) の希釈溶液を作成します。多くの 'lipophillic' (親油性)イオノフォアでも 10 µM 程度の濃度の水溶液なら問題なく溶かして調整できますし、それ以上濃い過飽和の状態でも構いません。 同様に、PBS緩衝液を使って 1、10、100、1000 nM の希釈溶液を作成します。

10 µM の溶液にはメタノールは僅か 1% しか含まれていません。即ち、これは水溶液と変わらない事を意味します。メタノールの濃度が高いと膜を壊したり、イオノフォアの親油性膜への配位を不完全なものにする恐れがあります。高濃度のイオノフォア溶液を使う必要がある場合は、より高濃度のストック溶液を使って (例えば 10 、ないし 100 mM、しかしこの濃度ではイオノフォアは溶けない恐れがあるので注意を要する) 、所定の濃度に希釈します。

図 2. tethaPod ユニット、背景はソフトウェア

イオノフォアを添加

測定を始める前に、使用する溶液が全て室温と平衡状態にあることを確認します。

tethaPod ユニットに取り付けて測定を始めます。各サンプルウェルのベースラインが安定するまで数分かかります。次の手順に従い:

  1. tethaPlate のウエストウェルから 200 µL の PB 緩衝液を吸引します。
  2. 直ぐに、最も低濃度のイオノフォア希釈液 200 µL と入れ替えます。
  3. 少なくとも5分間、シグナルが安定するまで膜の電導度を記録します。
  4. tethaPlate のウエストウェルから、測定したテスト溶液 200 µL を取り出します。
  5. 次に高い濃度の希釈液 200 µL のテスト溶液と入れ替えます。
  6. 同じ様に少なくとも5分間、シグナルが安定するまで膜の電導度を記録します。
  7. ステップ 4 ~ 6 を最大濃度のイオノフォア希釈液まで繰り返します(その前に、電導度シグナルがスケールアウトするか、膜が壊れてしまうかもしれません)。
  8. tethaPlate のウエストウェルから、測定したサンプル溶液 200 µL を取り除きます。
  9. 200 µL の PBS 緩衝液と入れ替えます。
  10. 8 ~ 9 の操作を3回反復し、電導度が減少してイオノフォアが'ウォシュアウト' されたのを確認します。

測定結果

測定した電導度をベースライン電導度(即ちイオノフォアが無い状態)で割って、電導度比を求める。

電導度比対イオノフォア濃度の対数グラフ、または必要に応じ、濃度の対数グラフを作成します。

急激な電導度の増加がある濃度で認められれば、良好な測定であることを示します。グラフの分解能を良くするには、テスト溶液の点数を増やし希釈濃度の幅を広めます。