マイクロ流体チップ内の電気浸透流の測定
非接触伝導度検出器を使ってマイクロ流体チップ内のチャネルに流れる電流をモニターし、 電気浸透流 ( EOF: electro-osmotic flow ) を測定しました。
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はじめに
PDMS (ポリジメシルシロキサン) マイクロ流体チップ内の電気浸透流を、静電結合型の非接触電度計 (C4D: capacitively-coupled contactless conductivity)を使ってチャネルに流れる電流をモニターすることによって測定しました。測定データは eDAQのPowerChrom で記録し解析しました。ここで報告する方法は、従来のフューズトシリカチューブを使ったキャピラリー電気泳動を含め、様々なタイプのキャピラリー電気泳動測定にも応用できます。
この独創的な研究は Henry at the Department of Chemical and Biological Engineering, Colorado State University. qian.guan@colostate.edu の Qian Guan 及び Dr. Charles S 等によって実施されたものです。
使用した装置
- ER225 C4D データシステム
- ET225 マイクロチップ用プラットフォーム
- コンピュータ PowerChrom ソフトウェア
- バックグランド電解液 (BGE): 20 mM 及び 18 mM ホウ酸(pH 9.20)、ホウ酸以外でもイオン強度が異なる二種類の溶液であれば構いません。
- Poly(dimethylsiloxane) (PDMS) マイクロ流体チップ-リザーバ2ケにつなぐことが可能な直線流路を有するもの
チャネル(流路)のサイズ: 長さ 4.75cm、幅 50μm、高さ 50μm
- 専用の高電圧シーケンサ (HVS)、ER230 高電圧シーケンサ
このアプリケーションでは ER280 PowerChrom システム、旧型の EA120 C4D アンプと ET121 プラットフォームを使いました。
測定条件
ここで紹介する測定データは、下記の測定条件で記録したものです:
- 高電圧: +881 V
- C4D 設定:
- 周波数 = 500 kHz
- アンプリチュード = 100 %
- ヘッドステージゲイン ON
測定のセットアップ
C4D アンプからの出力 K シグナルをPowerChrom ユニットの入力1に接続します。PowerChrom ユニットの入力2で電流をモニターします。この二つのシグナルを PowerChrom ソフトウェアで連続的に表示させて記録します。
電流をモニターすることによって電気浸透流(EOF)を測定します
電流をモニターする方法で EOF を測定することに関しては以前に報告(下記参照)しました。簡単に説明すると、一つのリザーバとチャネルに 20 mM のBGE を充填し、別のリザーバに 18 mM のBGEを入れます。最初のリザーバに+の高電圧を掛けると直ぐに電気浸透流が始まり、チャ ネル内の高濃度バックグランド電解溶液が徐々に低濃度バックグランド電解液に置き換わり、その結果チャネルの電気抵抗が増加します。印可した定電圧下でこのセパレーションカレントの変化をモニターします。カレントが定電流に達したら電位を反転させ、上の行程を反復させます。
- Huang, X., Gordon, M. J., Zare, R. N., Anal. Chem. 1988, 60, 1837–1838)
カレントがプラトーに達するのに要した時間を等式1に代入してEOFを算出するのに使います。ここで、L は分離チャネルの長さ、V は総印可電圧、tはカレントがプラトーに達するのに要した秒単位の時間を表します。
μEOF = L2/Vt Equation 1
C4D を使って電気浸透流を測定
マイクロチップをC4D マイクロチップ用プラットフォームに置き、スプリングネジを使って均一に接触するように固定します。C4D プラットフォーム表面に装着した二つの検出用電極の中心点が、マイクロ流体チップチャネルの適正な検出ポイントになっています。BGEロードと電圧制御は、前の項で説明した方法と同じです。カレントモニターとこの電気浸透流は同時に測定できます。
高感度で電導度検出を行うには、ボトムシートの厚さが 0.5㎜ 以下のマイクロチップを使くことをお勧めします。測定中はプラットフォームを動かしたり手で触らないように注意します。ノイズの原因になります。
シグナルが最初の安定した状態から急激な電導度変化が生ずるのに要する時間を C4D アンプでモニターします。Equation 2から電気浸透流(EOF)を計算します。ここで L はEOFがフローを開始するリザーバの配置点から検出ポイント間の距離、それ以外のパラメータはEquation 1と同じです。
μEOF = L’L/Vt Equation 2
結果
図 1. はカレントモニター (青のプロット) と C4D (黒のプロット) を使った EOF 測定のエレクトロフェログラムです。
チャネル内がより低濃度のBGEで満たされるにつれ 、カレントモニター法によってチャネル内の平均電導度が示されます。カレントモニターではこれが漸進的に減少し、チャネル全体がより低い濃度のBGEで満たされるとプラトーの状態に達します。
C4D のシグナルはチャネル内のある特定のポイントの電導度を測定したものです。従って、低い濃度のBGEが C4D 電極に達すると電導度に急激な変化が生じます。
図 2. は全データのエレクトロフェログラムを示したものです。チップのチャネルに最初ある極性の電圧で印可し、次に極性を反転させEOF の流れを逆方向にします。これを何度も反復して記録します。